2012年08月16日

「万年筆」中2 YS君

ある日、男は外の景色を見ていた。男は里帰りで、実家に帰っている最中だった。

 家事の手伝いなどを済ませ、縁側に寝転んでいた。すると、そこへ大き目の箱を持った男の母親が来て、箱の中身を見せてきた。その中には男のアルバムや少年期の思い出の品がたくさんあった。男は懐かしい気持ちでその品々を見ていた。

男が注目したのは、インクの切れた万年筆だ。それは、小さい時に祖父から譲りうけたものだった。その万年筆を使っていると、祖父が応援してくれている気がして、男は勉強し続けたものだった。しかし、万年筆のインクが切れた頃、祖父が死に、同時に男は気力も欠いて、優等生から劣等生へ転落、二流大学、二流の会社の平社員、そんなふうになってしまっていた。

ふと、顔を上げた時、仏壇に飾られた祖父の写真が目に入った。その時、男は無駄にした祖父の気持ちを思った。人生を悔い、それは涙となって男の目からあふれ出た。

それから数年過ぎた。会社に男の姿はない。でも、机に向かって働いていることに変わりはなかった。その手にはあの万年筆。男はあの日からすぐにかねて心に秘めていたことをするため、開業した。今はその会社も大きな企業となった。

万年筆のインクは、今日も満々だ。


【講評】
これも、前に紹介した「星」同様、テーマをずばりとは書かず、読み手に推測させる手法で創作したショートストーリーです。なぜか若い少年たちに創作依頼すると、設定が社会人なんですよね。読んでいる本がそうだからかもしれません。表現の修正は入りましたが、着想とストーリーはそのまま。深く読む作業ができるようにならないと、なかなか深く書く作業はできません。彼はエッセイも論評も、どちらも力をつけていっています。
posted by まつさくら at 12:45| Comment(0) | 小説作文